『塾歴社会』を読んで
最近図書館で借りた本で意外に面白かったのが、おおたとしまささんの『塾歴社会』。
ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体 (幻冬舎新書)
- 作者: おおたとしまさ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2016/01/29
- メディア: 新書
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発売された当初、愛読してるブログで紹介されてましたが、「SAPIXから鉄緑会へというお話でしょ、興味ないない」と思ってました。
それが、育休中に図書館に頻繁に行っていて、たまたま目にとまったので、借りて読んでみたところ、筆者の主張には同意できると感じました。
本の前半は、「塾歴社会」、すなわち、SAPIXから超難関中学へ進学し、鉄緑会に入塾して東大(主に理III)に進学という、日本のトップ頭脳集団が生まれるまでの説明が書かれています。
私自身は、ちゃんとした中学受験はしていないのですが(内部進学)、中学から受験して入学してきた友達も多いので、中学受験のあらましは知っています。
神奈川県出身の私の周りでは、20年以上前は日能研か四谷大塚が大勢を占めていましたが、今は最上位校を狙うならSAPIXみたいですね。
お子さんが早稲田アカデミーから某私立中学に進学した会社の先輩いわく、「開成筑駒桜蔭狙うならSAPIX、それより下ならどこでも変わらん」らしいです。
そのSAPIXの仕組みが体験談など交えて説明されていますが、なにより、「4年生で年間約60万円、5年生で約70万円、6年生で約120万円」という情報に目が飛び出ました。
どこの塾でもたいして変わらないようですが、中学受験、金がかかる。。。
そして、大昔理IIIの人と飲んだ時、その人が鉄緑会でバイトをしてたので存在を知った、東大医学部の鉄門と、東大法学部の同窓会緑会から名前をとったという鉄緑会、私の人生に全く関係なかった塾ですが、東大理IIIの占有率が高いんですよね。
超難関中学から構成されている指定校だと入塾テストなしで入れ、その他は入塾テストが必要という塾です。
私の友達情報でもそうですが、超難関中学高校って、学校で受験勉強用に授業は特にないんですよね。
むしろ行事に熱かったりする(特に男子校)。
で、受験勉強は鉄緑会というのが、ここでいう塾歴社会です。
ただ、本当に頭が良い人たちって、せいぜい1年半くらいの本気受験勉強で受験を突破しちゃう印象ですが、鉄緑会はどちらかというとコツコツがつがつ勉強させるガリ勉養成のようですね。
子供の教育に関して、SAPIXは検討したいけど、鉄緑会はちょっとなぁと思ってしまいました(そもそもお呼びじゃないw)。
そして、本の後半に「塾歴社会の光と闇」という筆者の意見が書かれています。
「塾歴社会」を良しとしないのであれば、受験システムを刷新しなければならない。そこで大学入試改革である。
ペーパーテストによる一発勝負ではなく、小論文や面接、集団討論などによって、表面的な学力以外の部分も評価対象にしようという方向性である。
(略)
論述式の試験や口述試問では、結果に階層文化が影響しやすい。審査側が所属する階層文化と親和性の高い階層文化に所属していた学生が有利になる。そのため、欧米では大学が階層文化の固定化に一役買っていることは教育界の世界ではもはや常識である。
(略)
大学入試改革によって、鉄緑会に通うような子供たちがますます有利になることはあっても、一気に不利になるということはまずあり得ない。
大学入試改革の記事を見るたびに私が思うことは正にこれで、結局ペーパーテスト一発勝負が一番平等なんですよね。
確かに「塾歴社会」という勝ち馬に乗れれば、受験勉強はスムーズかもしれない。
でも、それだけが受験勉強の方法ではなく、結果さえ出せればどんなやり方だっていいんですよね。
小学生が臨む中学受験はともかく、18歳が取り組み大学受験の受験勉強は、自分にとってベストなやり方を見つけられるんじゃないかなと思います。
ペーパーテストは結果に平等なので、私は「塾歴社会」を否定しません。
自分の子供たちに歩んで欲しいかはさておき、「塾歴社会」に乗っかったからといって、結果が保証されるわけではないですからね。